京都大学の今年度の国語の問題を読みましたので概評を述べます。

Ⅰ 現代文(小説) 尾崎一雄「痩せた雄鶏」 文系理系共通問題 標準レベル

近年大問一は評論・論説であったので、大問一が小説で受験生は驚いたかもしれませんね。

問二の説明問題は解答のイメージはつくがそれを記述するのが難しかったでしょう。

その他の設問は京大として標準的なレベルです。

Ⅱ 現代文(随筆) 米原万里「前門の虎、後門の狼」 理系問題 易しい

同時通訳という作業についての筆者の経験と教訓を述べた文章。

書くべき内容は見つけやすいので京大の問題としては易しい部類。

問二の傍線部の故事成語(表題にもなっている)は京大を目指す受験生としては

知っておきたいが後の文からその意味はわかる。

京大型の国語の記述の練習を重ねた受験生にとっては易しく感じたのではないでしょうか。

Ⅱ 現代文(評論) 坂口安吾「意慾的創作文章の形式と方法」 文系問題 標準レベル

芸術(特に小説)の創作について述べた文章。

問五がやや難しい。傍線部の「実体」と対比となる「幻影」という表現を組み込まなければ

いけませんが、この「幻影」をわかりやすく書き換えられたかがポイントです。

全体として京大の文系問題としては難易度・記述量ともに標準的です。

Ⅲ 古文(鎌倉・擬古物語) 作者未詳「苔の衣」 理系問題 標準レベル

見舞いの歌とその返歌についての出題。和歌のやりとりという頻出パターンです。

京大の理系問題としては標準レベルですが、京大の他の科目に比べると古文は格段に

難易度が下がりますので受験生達は古典は得点源にすべくしっかり対策をするべきでしょう。

Ⅲ 古文(江戸・歌論) 香川景樹「百首異見」 文系問題 難しい

周防内侍の歌に対する「初学」の評価を批判する文章。

問一の現代語訳は難しい。受験生達は訳しにくかったことでしょう。

問三の「初学」の評価の2つの誤りも明示されていないので「千載集」の詞書と読み比べて

判断する必要があります。これもなかなか厄介な問題でした。

江戸時代の文章は高校の教科書ではあまり載っていないですが、京大ではよく出題されるので

問題集などで取り組んでおきましょう。

全体として理系はやや易化、文系はやや難化といったところでしょうか。

京大の国語理系問題は国語が必須解答科目となって以降だんだんと易化しているように

思われます。

アドバイス

京大の現代文の対策のアドバイス

文章を正確に読めて内容を理解できることは前提条件。

そこがクリアできていないならば語彙を増やし文章の要旨を読み取る訓練から始めましょ

う。段落毎に要旨を書き出し、最後に文全体を要約する訓練を積みましょう。

そこがクリアできているならば、あとはアウトプットの練習です。

京都大学の現代文は記述量が非常に多いので解答欄を埋めるのも一苦労です。

しかし本文中の語句を適当に引用してつなげるだけでは通用しません。

解答に必要であろう要素を見つけ出し、それが採点者(読む人間)に正しく伝わるよう構

成しなければなりません。

おすすめの勉強法は、過去問をまずは制限時間内に解ききること。

その際、解答の要素になりそうな表現をなるべく多く盛り込み、少しでも部分点をもらえ

る解答を作ること。

そしてその後、自分の作った解答を元に時間無制限で自分で納得がいくまで推敲作業をす

ること。

そしてそれを人に採点・講評してもらうこと。

学校の先生や塾の先生など信頼できる人を上手に利用しましょう。